2016年04月24日

運用プロセスとディスクロージャー

昔取った杵柄で、知人の保有している投資信託の分析をすることがあります。定量分析は当然ですが、より重視しているのは定性面で、運用会社の哲学や姿勢、リソース、ファンドの運用プロセスなどです。具体的には、販売用資料や、目論見書(何か目論んでいる?)、週次、月次の報告書などをチェックします。実は、運用会社に在籍していた時にどれも実際に作成していた経験があります。

 購入者にとっては、なんでもいいから儲かればいいと思うのは当然かもしれません。しかし、儲かるというのは偶然の要素が多いというか、確率論ので世界でもあります。以前、ご紹介した本の「まぐれ」の副題のように「投資家は運を実力と勘違いする」ケースもままあります。なので少なくともご自分の投資行動がいったい何を意味しているのかぐらいは知っておたほうが良いと考えていますし、知り合いにはそう伝えています。しかし、そういったことに興味がなく、何を買えばいいのかという結論だけを知りたいというかたも多いようです。

 話がそれましたが、定性分析の中でも、哲学はまたの機会にするとして、通常はファンドの運用プロセスというものがあります。具体的には運用の目的(安定的な信託財産の成長という曖昧な表現も多いです。)で超過収益を獲得するのかとか、絶対収益を獲得するなどがあり、そしてその目的をどのような手段で実現するかということが書かれています。そのプロセスにそれなりに合理性があり、それを実現するためのリソースがその会社にあるようであれば、一応納得はします。

 ここ数年で設定されたファンドで散見されるのは、いわゆる安定的な毎月分配金を出すために(?)、通常のオーソドックスな運用以外に、ちょっと欲張ってプラスアルファを出す仕組みを設けていることがあります。オプションや先物、通貨の取引を使った追加的な収益の獲得を目指しているものが多く見られました。そのこと自体は否定しません。しかし、結果的にうまくいかないケースも多くあり、出来もしない余計なことをしないほうが良いのではとも思うファンドもあります。

 話は変わって、週報や月報ですが、それなにり受益者のために真面目に仕事している会社であれば、上記の運用プロセスに沿った形で、市況や投資行動の内容、そしてその結果などについて説明が書かれているべきと考えています。しかしながら人材不足なのか、手を抜いているのか、それともポジショントークを避けているのかは不明ですが、なんら説明責任を果たしていない報告書も多くあります。よくあるのは、基準価格の推移、組入上位銘柄、投資対象の市場のチャートなどを貼り付けただけのものです。私見ですが、そんな情報では、運用の成果の原因などが何なのかさっぱりわかりません。通常は運用プロセスに即した、寄与度などを計算する要因分析が抜けていたら、まずは手抜きであると思っています。真面目にやっているところもあれば、それなりの規模がある会社であっても、明らかに無意味な報告書を公表しているところもあります。

 保有されているファンドの運用報告書を見られたことはありますか?読んでもなんだかわからなければ、そういう投資信託は保有しないほうが基本的には良いかと思っています。


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Posted by 木原 昌彦 at 02:53│Comments(0)資産運用
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