2016年04月24日
インフォメーション・レシオ(情報比)
先日、運用のスタイルということについて投稿しました(URLは以下の通り)。
http://schole.chesuto.jp/e1381470.html
アクティブ運用とパッシブ運用という分類があるということを書いています。おおまかに言えば、ベンチマークとするインデックスに勝つことを目的としているのをアクティブと考えて良いかと思います。
インデックスに勝つための哲学としては市場は非効率であるという前提があり、まあ否定できない点も多くあるかと思います。しかし、非効率であるということを前提としたとしていても、その非効率部分を発見する方法論が必要です。可能であれば、安定的に発見できればいいのですが、コスト面などで不利なこともあり、なかなか困難な場合が多いです。
一般的には、投資家の多くは結果にしか興味を持たないようです。いわゆる勝てば官軍であって、勝った理由とかプロセスはどうでも良いということですね。もっとも、それは価値観の問題なので特に否定はしません。
ファンドのパフォーマンス評価の仕事をしていた時は、もちろん単純に勝ったか負けたかという結果だけ注目する訳には業務上いきませんでした。ファンド評価によく使われるのにシャープ・レシオというのがあり、こちらは以前ブログに書いたことがあります。(以下URL)
http://schole.chesuto.jp/e1377361.html
しかし、アクティブなファンドを評価する場合は、インフォメーション・レシオ(情報比)という指標があり、計算方法としては、超過収益率の平均値をアクティブリスク(超過収益の標準偏差、リスクモデルによる事前推定値を使用する場合もあります)で除するというものです。つまり、テイクしたアクティブリスクに対してどれだけの超過収益があったかということです。過大なリスクを取っていれば、たまに驚異的なリターンを獲得することがあります。しかし、それは当たり前のことであって運用能力があるとは必ずしも言えないケースがままあります。
また、シャープレシオの場合は絶対的な数値自体にはあまり意味がないということを書きましたが、インフォメーションレシオの場合はそれなりに意味を有し、この数値が0.5~1.0程度あるとそこそこうまくいっており、2.0以上となるケースは非常に稀で相当に良い成績と言われます。私はファンドの評価業務において、(頼まれもしないのに)超過収益率のt検定なども行っていました。それによると多くのケースだとうまくいっているのは、ほぼ偶然の範囲内でした。しかし、一方で統計的に有意な水準で超過収益率を出しているものは、かなりの少数派でしたが存在はしていたと記憶しています。
王貞治さんと長嶋茂雄さんを比較して「記録よりも記憶」という表現がありますが、厳密な統計的事実よりも曖昧な印象の方がひとを満足させることなのかもしれません。そもそも個人の投資家の場合、通常は(可能かどうかは別にして)絶対的なリターン獲得が目的であり、インデックスに勝つことを目標にしているのは少数派だと思います。私見ですが、よくわからない時は何もしない、つまり「休むも相場」ということを選択するのも重要かもしれませんね。自信や確信が持てる時だけ投資行動を行う、ヒット&アウェイのほうが良いかもしれません。
http://schole.chesuto.jp/e1381470.html
アクティブ運用とパッシブ運用という分類があるということを書いています。おおまかに言えば、ベンチマークとするインデックスに勝つことを目的としているのをアクティブと考えて良いかと思います。
インデックスに勝つための哲学としては市場は非効率であるという前提があり、まあ否定できない点も多くあるかと思います。しかし、非効率であるということを前提としたとしていても、その非効率部分を発見する方法論が必要です。可能であれば、安定的に発見できればいいのですが、コスト面などで不利なこともあり、なかなか困難な場合が多いです。
一般的には、投資家の多くは結果にしか興味を持たないようです。いわゆる勝てば官軍であって、勝った理由とかプロセスはどうでも良いということですね。もっとも、それは価値観の問題なので特に否定はしません。
ファンドのパフォーマンス評価の仕事をしていた時は、もちろん単純に勝ったか負けたかという結果だけ注目する訳には業務上いきませんでした。ファンド評価によく使われるのにシャープ・レシオというのがあり、こちらは以前ブログに書いたことがあります。(以下URL)
http://schole.chesuto.jp/e1377361.html
しかし、アクティブなファンドを評価する場合は、インフォメーション・レシオ(情報比)という指標があり、計算方法としては、超過収益率の平均値をアクティブリスク(超過収益の標準偏差、リスクモデルによる事前推定値を使用する場合もあります)で除するというものです。つまり、テイクしたアクティブリスクに対してどれだけの超過収益があったかということです。過大なリスクを取っていれば、たまに驚異的なリターンを獲得することがあります。しかし、それは当たり前のことであって運用能力があるとは必ずしも言えないケースがままあります。
また、シャープレシオの場合は絶対的な数値自体にはあまり意味がないということを書きましたが、インフォメーションレシオの場合はそれなりに意味を有し、この数値が0.5~1.0程度あるとそこそこうまくいっており、2.0以上となるケースは非常に稀で相当に良い成績と言われます。私はファンドの評価業務において、(頼まれもしないのに)超過収益率のt検定なども行っていました。それによると多くのケースだとうまくいっているのは、ほぼ偶然の範囲内でした。しかし、一方で統計的に有意な水準で超過収益率を出しているものは、かなりの少数派でしたが存在はしていたと記憶しています。
王貞治さんと長嶋茂雄さんを比較して「記録よりも記憶」という表現がありますが、厳密な統計的事実よりも曖昧な印象の方がひとを満足させることなのかもしれません。そもそも個人の投資家の場合、通常は(可能かどうかは別にして)絶対的なリターン獲得が目的であり、インデックスに勝つことを目標にしているのは少数派だと思います。私見ですが、よくわからない時は何もしない、つまり「休むも相場」ということを選択するのも重要かもしれませんね。自信や確信が持てる時だけ投資行動を行う、ヒット&アウェイのほうが良いかもしれません。
2016年04月24日
運用プロセスとディスクロージャー
昔取った杵柄で、知人の保有している投資信託の分析をすることがあります。定量分析は当然ですが、より重視しているのは定性面で、運用会社の哲学や姿勢、リソース、ファンドの運用プロセスなどです。具体的には、販売用資料や、目論見書(何か目論んでいる?)、週次、月次の報告書などをチェックします。実は、運用会社に在籍していた時にどれも実際に作成していた経験があります。
購入者にとっては、なんでもいいから儲かればいいと思うのは当然かもしれません。しかし、儲かるというのは偶然の要素が多いというか、確率論ので世界でもあります。以前、ご紹介した本の「まぐれ」の副題のように「投資家は運を実力と勘違いする」ケースもままあります。なので少なくともご自分の投資行動がいったい何を意味しているのかぐらいは知っておたほうが良いと考えていますし、知り合いにはそう伝えています。しかし、そういったことに興味がなく、何を買えばいいのかという結論だけを知りたいというかたも多いようです。
話がそれましたが、定性分析の中でも、哲学はまたの機会にするとして、通常はファンドの運用プロセスというものがあります。具体的には運用の目的(安定的な信託財産の成長という曖昧な表現も多いです。)で超過収益を獲得するのかとか、絶対収益を獲得するなどがあり、そしてその目的をどのような手段で実現するかということが書かれています。そのプロセスにそれなりに合理性があり、それを実現するためのリソースがその会社にあるようであれば、一応納得はします。
ここ数年で設定されたファンドで散見されるのは、いわゆる安定的な毎月分配金を出すために(?)、通常のオーソドックスな運用以外に、ちょっと欲張ってプラスアルファを出す仕組みを設けていることがあります。オプションや先物、通貨の取引を使った追加的な収益の獲得を目指しているものが多く見られました。そのこと自体は否定しません。しかし、結果的にうまくいかないケースも多くあり、出来もしない余計なことをしないほうが良いのではとも思うファンドもあります。
話は変わって、週報や月報ですが、それなにり受益者のために真面目に仕事している会社であれば、上記の運用プロセスに沿った形で、市況や投資行動の内容、そしてその結果などについて説明が書かれているべきと考えています。しかしながら人材不足なのか、手を抜いているのか、それともポジショントークを避けているのかは不明ですが、なんら説明責任を果たしていない報告書も多くあります。よくあるのは、基準価格の推移、組入上位銘柄、投資対象の市場のチャートなどを貼り付けただけのものです。私見ですが、そんな情報では、運用の成果の原因などが何なのかさっぱりわかりません。通常は運用プロセスに即した、寄与度などを計算する要因分析が抜けていたら、まずは手抜きであると思っています。真面目にやっているところもあれば、それなりの規模がある会社であっても、明らかに無意味な報告書を公表しているところもあります。
保有されているファンドの運用報告書を見られたことはありますか?読んでもなんだかわからなければ、そういう投資信託は保有しないほうが基本的には良いかと思っています。
購入者にとっては、なんでもいいから儲かればいいと思うのは当然かもしれません。しかし、儲かるというのは偶然の要素が多いというか、確率論ので世界でもあります。以前、ご紹介した本の「まぐれ」の副題のように「投資家は運を実力と勘違いする」ケースもままあります。なので少なくともご自分の投資行動がいったい何を意味しているのかぐらいは知っておたほうが良いと考えていますし、知り合いにはそう伝えています。しかし、そういったことに興味がなく、何を買えばいいのかという結論だけを知りたいというかたも多いようです。
話がそれましたが、定性分析の中でも、哲学はまたの機会にするとして、通常はファンドの運用プロセスというものがあります。具体的には運用の目的(安定的な信託財産の成長という曖昧な表現も多いです。)で超過収益を獲得するのかとか、絶対収益を獲得するなどがあり、そしてその目的をどのような手段で実現するかということが書かれています。そのプロセスにそれなりに合理性があり、それを実現するためのリソースがその会社にあるようであれば、一応納得はします。
ここ数年で設定されたファンドで散見されるのは、いわゆる安定的な毎月分配金を出すために(?)、通常のオーソドックスな運用以外に、ちょっと欲張ってプラスアルファを出す仕組みを設けていることがあります。オプションや先物、通貨の取引を使った追加的な収益の獲得を目指しているものが多く見られました。そのこと自体は否定しません。しかし、結果的にうまくいかないケースも多くあり、出来もしない余計なことをしないほうが良いのではとも思うファンドもあります。
話は変わって、週報や月報ですが、それなにり受益者のために真面目に仕事している会社であれば、上記の運用プロセスに沿った形で、市況や投資行動の内容、そしてその結果などについて説明が書かれているべきと考えています。しかしながら人材不足なのか、手を抜いているのか、それともポジショントークを避けているのかは不明ですが、なんら説明責任を果たしていない報告書も多くあります。よくあるのは、基準価格の推移、組入上位銘柄、投資対象の市場のチャートなどを貼り付けただけのものです。私見ですが、そんな情報では、運用の成果の原因などが何なのかさっぱりわかりません。通常は運用プロセスに即した、寄与度などを計算する要因分析が抜けていたら、まずは手抜きであると思っています。真面目にやっているところもあれば、それなりの規模がある会社であっても、明らかに無意味な報告書を公表しているところもあります。
保有されているファンドの運用報告書を見られたことはありますか?読んでもなんだかわからなければ、そういう投資信託は保有しないほうが基本的には良いかと思っています。
2016年04月17日
成長を愚弄する?

よく周りに言っていることですが、私は癒し系ならぬ、冷やし系です。言動がその場を冷やしたりすることがままあり、夏場にはもってこいかと考えておりますが、意識的にリミッターをかけていないと(つまり自然体)、人の話の腰を折ってしまうこともあ多々あります。やはり、コミュニケーションを円滑にするには、なるべく人の話の腰は揉むようにしたいと思っています。
ところで投資にはいろいろな対象や手法、スタイルといったものがあります。株式投資に限定すると、投資目的はインカムゲイン(配当)とキャピタルゲイン(値上がり益)の獲得となるかと思います。前者はとりあえず多くの場合、比較的安定的ではありますが、後者は不安定で、ほぼ(?)予測が不可能とも言えます。
株価の変動には、外部要因も多く考えられますが、結局のところ当該企業の(1株あたりの)利益水準とその成長期待に寄ると考えられます。つまり株価が上がるには、単純には企業が成長する必要があるということです。
一昔前(?)の証券マンのセールストークには、「お客さんに夢を買ってもらう」というテーマがありました。勧める投資対象の企業や業界、国(外国の株や債券を組み入れる投資信託などの場合)のバラ色の未来を説明するということです。しかしながら、結果がともなうことは少ないケースです。なぜなら、将来に対する明るい情報は既に水面下で(?)出回っていることが多く、価格に織り込まれていることがままあるからです。「夢を望む」と書いてムボウと読んだりすることもありますが、末端の営業マンの話や新聞記事、ニュースで放送される内容には、投資価値のある情報としては、ほぼ最終局面を示すのみという場合が多く見受けられます。
また、高い戦略性を持ったビジネスモデルを有する企業もあるものの、それが成功するかどうかは、多くの不確実性をクリアする必要があり、実はコントロールできないことのほうが多いとも感じられます。よく言われることですが、できない理由はいくらで出せるものの、それを実現させるというアイデアは希少かもしれません。もちろん、アイデアがあるということは重要ではありますが、当然のことながらリスクがあり、成功や成長の期待が高いほど、それが裏切られた時の落胆は大きく、株価の値下がり率も大きくなると思われます。こういった理由で、成長(すると思われる)株に投資するのはリスクが高いということになります。
成長株投資をグロース(Growth)投資と表現することが資産運用業界では一般的です。私はアナリストという仕事をしていたころ、正直、このグロース投資というスタイルに疑問を持っていました。理由は企業を取材したり、機関投資家向け説明会などで、仮にポジティブな話を聞けたとしても、そんな情報は自分だけが持っている訳ではなく、また、自身の企業分析で有望な銘柄かと思うことはあっても、その成長プロセスの実現には多くの前提条件があるだけでなく、結果としての証券投資では、確率論的には五分五分と思えました。そのため、自分自身のスタイルは徐々に割安株、いわゆるバリュー(Value)投資へと導かれました。大儲けは期待できないものの、負ける確率が低いほうを選んだということです。バリュー投資では、証券分析の父と言われているベンジャミン・グレアムや、その弟子で著名な投資家のウォーレン・バフェットがいます。面白みはないかもしれませんが、非常に合理的ではあると、彼らの著作等を読んでいて感じました。
成長株を見つけることは楽しいですね。結果を出すのは非常に困難ですが…ちなみに私は第3次性徴期です…