実体のない煙

木原 昌彦

2024年03月14日 21:16



私が金融(投資信託委託および投資顧問、銀行)業界から足を洗ったのは、きっかけがありました。仕事自体の存在意義に疑問を思ったからです。どうも情報の非対称性から顧客に正確な情報を伝えきれていないか、もしくは金融マン自身が正しい情報を知らないという感がありました。

若い頃は、わからないことが多すぎて、それがわかるようになるように専門書を読んだり、専門家に聞いたりしましたが、やればやるほど疑問のほうが増えてきました。それでも、やれば理解できるようになると考えていました。

ある時、後輩から勧められた本で愕然としました。日本語版が出る数年前に、米国で出版されたものでしたが、著者はナシーム・ニコラス・タレブ氏というかたで、タイトルは「まぐれ」で副題が「投資家はなぜ、運を実力と勘違いするのか」というものです。詳しい内容はネタバレを避けますが、要はプロとか専門家と言われる人達が、実際にできることの限界を示したものです。以下に楽天BOOKSのリンクを貼っておきます。

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ちなみに、その後、同氏は「ブラック・スワン」という著作も出されましたが、素材は若干異なるものの、内容はほぼ一緒であったような気がします。割と専門性が高く、金融知識や統計学の素養がないと理解しにくい内容であったにも関わらず、当時のビジネス本でベストセラーになってびっくりしました。そしてその後、「ブラック・スワン」という映画が封切られましたが、まったく関係ございません。著書に関しては、上下巻ですが、念のためリンクを貼っておきます。

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また、これは小説ですが、ノア・ゴードン氏の千年医師物語シリーズ(たしか3部作)の第一弾の「ペルシアの彼方へ」でも考えさせられました。内容の大枠としては、孤児であった主人公が、当時インチキとされていた旅回りの外科医(内科医は認められていましたが)に拾われて、最後はペルシアで医術を学ぶいうものでした。師匠の外科医が亡くなった時に、主人公が墓碑に師匠本人がよく言っていた、「私は実体のない煙を売った」と刻んでもらったことが印象に残っています。もっとも、エンターテイメントとしても十分楽しめました。そして、実は映画化されたようです。文庫版・上下巻で既に絶版のようですが、中古が出回っているので、こちらも楽天BOOKSのリンクを貼ります。

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実体のある、つまり何らかの形で誰か(通常は顧客や同僚)の役に立つ仕事をしたいものです。

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